1週間が過ぎると、施設警備というのは基本的に退屈なことがわかってきた。被害者が押しかけてこなければやることがない。それで自然と話をして時間をつぶすようになり、一緒に研修を受けた新人警備員5人全員が、隊長に対していい感情を持っていないことがわかった。
隊長は20代後半の肥満男で、鼻が脂肪の厚さで陥没したようになっていた。夕方に社員の女性がシュレッダーの袋を抱えて降りてくると、
「女性にこんなの持たすなよ!」と、手伝うことを指示し、「嬉しいかも」と言われて喜んでいた。別の現場で一緒になったらしい警備員が応援で加わったときは、「蟻が10匹ー、蟻が10匹ー」(蟻が10=ありがとう)と、独特の気持ち悪い言い回しで感謝を伝えていた。
意味もなく敬礼の練習をさせたり、「警備員ではなくガードマンだ」と呼びかたまで矯正させていたが、自分が新人5人によく思われていないことに気づくと、
「いま辞めて生活していけるかなあ。おばあちゃんに百万円借りてるしなあ。車の点検の費用も必要だしなあ」と言いはじめ、その2日後から姿を見せなくなった。